カラオケ店を出て五分くらいの公園に、私と有馬くん、そして七瀬ちゃんはいる。

「はい、高畑。七瀬はこれな」

と、近くのコンビニに行っていた有馬くんは、私にミルクティー、七瀬ちゃんにはホットレモンティーを買ってきてくれた。
「ありがとう」と呟きミルクティーを手に取ると、ペットボトルの温かさが心にしみた。有馬くんからもらったものだからか、ものすごくうれしい。・・・ん?なんで、有馬くんからもらうと嬉しいんだろ・・・

「あ、これ・・!お兄ちゃん、わたしがこれ好きなの覚えててくれたんだ・・」

七瀬ちゃんは心底幸せそうな顔をしてホットレモンティーを飲んでいる。
そして少しして、何かを思い出したように「あっ」と声を上げた。

「そういえば、自己紹介するの忘れてましたね。わたし、有馬七瀬といいます。この人の妹で、中二です」

ぺこりとお辞儀をし、有馬くんを小突きながら七瀬ちゃんはにこりと微笑んだ。
笑顔はまだあどけなさが残っているが、やはり大人っぽい。とても中二には思えない。下手したら私より大人っぽいかも。

「高畑梨々花ですっ・・。有馬くんの友達です!」

「梨々花さんですね。よろしくお願いしますね」

「う・・うんっ。よろしくね!」

その後、七瀬ちゃんと色々話しているといがいなことがわかった。

「えっ、七瀬ちゃん、テニス部部長なのっ!?」

「はい。まだ始めて一年ちょっとなんですけど」

「へぇっ、すごいんだねー!」

「そんなことないです。学年でもテストは万年二位ですし」

えっ。確か七瀬ちゃんが通う中学校って幼稚園から大学までエスカレーター式で通える超エリートお嬢様学校だったって言ってたよね・・・
しかも一学年千人近くいるんじゃ・・・
その中で二位なんて、すごすぎる・・・!

「七瀬、そろそろ帰れよ。明日試合じゃなかったっけ」

その時有馬くんがいきなり割って入ってきて、七瀬ちゃんは少し不機嫌になった。

「もう帰ろうとしたとこだし。ていうか、お兄ちゃんが梨々花さんと二人でいたいだけでしょう?」

「はっ・・なにいっ・・・なわけないだろ」

七瀬ちゃんに厳しい一言を言われ、有馬くんは明らかに動揺しているけど。

「そんなことないよ。有馬くんは七瀬ちゃんを気遣ってくれてるだけだよ?」

私にはそうしか思えない。
だって、有馬くんがわたしといっしょにいたいだなんて、思うはずないから。
でも。
自分で言ったくせに、私・・
どうしよう、泣きそう。
どうして?

私、有馬くんと一緒にいたいの?


だって・・・

私には、かいくんが・・・・・








あれ?

私、なんで有馬くんとかいくんを比べているんだろう。

有馬くんはただの友達のはず。


かいくんは、なんでも話ができる大切な人のはず。


そうなのに。



私、有馬くんとかいくんは同じじゃないかって思い始めてる。

それはきっと。




有馬くんとかいくん。

二人を好きになってしまったんだ。