「お待たせーっ!」
ここは、カラオケ店の一室。
あれから私達は急いでメイクやら何やらして、小走りでカラオケまで来たんだ。
部屋の中は少し狭くて、でも十人くらいは入れそうなスペースがあった。
「あ、待ってたよーっ。ここ座ってね」
「うわっ、その子が梨々花ちゃん!?めっちゃ可愛いなー!」
「やべーかわいいー」
愛想良く私たちに座るところを指定した男の子は、茶髪で明るそうな雰囲気だった。
それから私たちはドリンクを頼み、雑談していると全員集まったようなので、自己紹介をすることになった。
理系コースの男子は、三人。
えっと、一番右の男の子は蓮見謙太くん…真ん中は鳴瀬くん…最後は……
って、え!?
そこには、紛れもない有馬くんがいた。
驚く私に気づいたようで、有馬くんもこちらを見て目を見開いている。
有馬くんも今気づいたようだ。
そしていつの間にか私の隣に座って、耳打ちをしてきた。
「ちょっ…高畑、なんでいるんだよ?」
「え、えっとぉ〜、飛鳥ちゃんに誘われたんだ。でもまさか有馬くんもいるなんて」
「俺もびっくりした。男だけだと思ったら女きたし、その中にお前いるしで」
「そっか…」
「ま、いーや。帰り送ってくから、最後までいろよ」
「えっ、そんな、いいよっ」
「いーから。」
そんな有馬くんの声に欺くことも出来ず、私は頷いた。
その後は楽しく、時間も忘れて歌った。
かいくんはいないんだ・・・半分がっかりしながら。
そして二時間ほどたった後、有馬くんがなぜかそわそわし始めて・・・。
「わり、俺帰るわ」
「ええーっ、なんでー!これからが楽しいのにぃ」
飛鳥ちゃんがぷうっと口を膨らませて抗議する。
「悪いな。じゃ、そういうことだから。高畑ー」
あ、そうだった。送ってくれるんだ。
「う、うんっ」
立ち上がると案の定、飛鳥ちゃんたちがにやにやしはじめた。
「え、まさか梨々花、有馬と・・・w」
すると有馬くんはあからさまにいやそうな顔をしたので、私はいそいそと帰る準備をした、その時。
「お兄ちゃんっっ!!」
突然カラオケボックスのドアが開き、女の子が入ってきた。
「帰るの遅いからメールしたのに既読無視とかひどいよ!」
ぷんぷんしながら言うその女の子。
誰の妹かな・・・?高校生ほどのかわいい子だ。
よく見ると、とても整った顔立ちをしていて、お人形さんみたい。
大きな瞳にぷっくりした唇。大人っぽい外見で、胸までの黒髪が白い肌にはえている。
背は私より少し高いくらい。
なんか、目のあたりが誰かに似ている気が・・・。
「・・・あー、七瀬。くんなっつったのに・・」
その言葉を発したのはなんと・・・有馬くんだった。
だから、なんとなく妹さんと目が似てたんだ。
「えっ、有馬の妹!?めっちゃ可愛い!」
みんな知らなかったようでびっくりしている。
「突然お邪魔しちゃってすみません。わたし、有馬七瀬といいます。中二で、この人の妹です」
そう言って七瀬ちゃんは有馬くんをグイっと引き寄せた。
中二なの・・・!?
大人っぽいから中学生には見えない。
礼儀もしっかりしてる。
こんな子が有馬くんの妹だなんて・・・!
だから、有馬くんそわそわしてたのかなぁ。
そんな風に考えながらほのぼのとしていると、七瀬ちゃんが私をじっと見ている気がした。
でも、すぐ笑顔で会釈をしてきたので、私は急いで返す。
顔を上げるともうプイと顔をそむけてしまっていて、有馬くんに「早く帰ろうよぉ」と駄々をこねている。その姿もかわいいのだけれど。
「あー分かったわかった。・・高畑、早く」
「あ、ごめんっ!」
私は七瀬ちゃんを見てぼーっと立ち尽くしていて、有馬くんにせかされてしまった。みんなにかるく挨拶し、荷物をもってカラオケボックスを出た。
七瀬ちゃんが、不満そうに私を見ている気がした。