だが、再び口を開くと。

「ユウは、遥に会うのをずっと楽しみにしていた…」

そう言って遥から目を反らし、雲間から照らすオレンジ色の夕陽に目を細めた。


「でも、じゃあ…何で忘れろなんて言うの?」


遥は静かに聞き返した。

その声音に攻めるようなニュアンスはない。

ただ、蒼が不意にどこか寂し気な色を垣間見せたから。それが何故だか気になった。

だが、蒼は再び何かを言葉にすることを躊躇って[ためらって]いるようだった。

遥は珍しく食い下がるように言葉を続けた。


「蒼くん。話してくれないと何も分からないよっ。七年前…蒼くんが何で急に私を避けるようになったのかも…私、ずっと考えてた。何か嫌われるようなことしちゃったのかな…。蒼くんを傷つけるようなこと言っちゃったのかなって…。本当にずっと、考えてた」

また泣きそうになるのを何とか堪えて言う。

そんな遥に視線を合わせぬまま耳を傾けていた蒼が、ぽつりと言った。

「…嫌ってなんかいない」

「でもっ。じゃあ何で公園に来なくなっちゃったの?ユウくんとは変わらず会っていたんでしょう?それなら、私が原因なんじゃないの?それに偶然会った時、蒼くん…私を避けるように…逃げて…行っちゃったじゃな……」

最後まで言葉は続かなかった。

遥の瞳からは再び涙が溢れ出し、堪えきれない嗚咽が漏れる。

その様子にやっと視線を戻した蒼は、自嘲するように呟いた。


「ごめん…。泣かせたくなんかないのに。てんで駄目なのな…」