でも…。引き留めたものの、蒼くんは何を聞いても無言でこちらを見ているだけで。

その無表情な瞳の中に、自分たちの間にある溝の深さと、とてつもない距離を感じた。

(こうして引き留めていることさえ、きっと迷惑でしかないんだね…)

そう思ったら、堪えていた涙が不意に零れ落ちた。

泣いたりなんかしたら、余計に蒼くんを困らせてしまうことぐらい分かっているのに。

これ以上、嫌われたくなんかないのに…。


ユウくんに会えないという事実よりも、今のこの状況が何よりも悲しくて。

そして、同時に。

思い出の中の二人は、もういないんだってことを実感した。

(それでも、最後くらいは笑顔でお別れしたい…)

必死に笑顔を浮かべる。


今までのありがとうの気持ち。

何より、二人に救われた過去は偽りじゃないから。

私の中では、いつまでも大切な友達に違いないから。


でも…。


「ヤダな。私だけ、いつまでも子どものままで…。二人に笑われちゃうよねっ。こんなだから…二人に、嫌われちゃうんだ…ね…っ…」


思わず俯いて零してしまった泣き言に。


「……遥…」

そこで初めて蒼くんが重い口を開いた。


「お前のことを嫌いだなんて、そんな訳ないだろう?」


(……えっ…?)

その声に呆然と顔を上げると。

思いのほか真剣な顔をした蒼くんと目が合った。


「ユウだってそうだ。アイツは…」


そこまで言い掛けたところで、一旦言葉にするのを躊躇する。