もしも、約束を覚えていたとして。

本当に彼が約束の場所に現れたとしても、今の自分を見てどう思うんだろう。

それを考えると何だか不安で…。


別に、本気で恋愛的な進展を期待している訳じゃない。

既に過去の話であって、もうそんな気持ちは微塵もないかも知れない。

だけど、思い出は綺麗で儚いものだから。

それが壊れてしまうのは嫌だし、もしも今の…現実を否定されてしまったらと思うと怖いのだ。


「でもさ。遥自身は?その子のこと好きだったの?」

「それも、よく分からないんだ」

「分からない?」

「うん。友達としては好きだったよ。遊ぶのも楽しかったし。でも恋愛感情があったかって言われるとね。『お嫁さんにする』って言われた時は嬉しかったけど、単に花嫁そのものに憧れてただけだったような…」

「あー分かる!やっぱさ、憧れるよね。花嫁姿っ」

「ねっ。朋ちゃんは和装?洋装?どっち派?」

「そりゃー断然、洋装でしょう!」

「だよねっ!私もっ」

「でしょ!やっぱりドレス一度は着たいよねー。純白のやつ」

「ねっ。二度も着ることがあったら、それはそれで困っちゃうけどね」

「あはは。それ、シャレになんないからっ」

二人して笑い合う。


そうして、そのまま話題は別の方向へとズレてしまったのだけれど。



実は、その約束の日は…。

あと一週間後にまで迫っていた。