やっぱりみんなの関心事は正体不明のキーボード。

「Fly Viewのライブは初めてだもんね」

「生声聞けるのが楽しみ」

「やっぱ“ユウ”の顔も見なきゃ」

「絶対、前まで走るぞ」

 開場時間になりライブハウスのスタッフが入口のドアを開ける。

 一斉に押し寄せる人に押し潰されるようにして入りこむと、舞台目指しての争奪戦。

 危機せまる迫力の方々には負けたけど、肉眼でしっかりと顔が見えそうな位置だからよしとしよう。

 ドキドキしながら出番を待つ。

 始まるまでの時間が長く感じられる。

 こんなに人が集まって、今更ガセネタでしたなんてオチはしないでよ、と祈りつつ楽器の機材が所狭しと並べられたステージを見つめる。

 時を刻む秒針のリズムが皆の心の中のカウントダウン。


 そして、一斉に照明が消えた。