「グスッ…ヒック………………」

泣き続ける朱鳥をあやす。

…だけど、朱鳥は一向に泣き止んでくれる様子はなくて……

俺、もうすぐ午後の仕事始まっちゃうよ……

ここは、なんとか説得して行かなきゃ…

「朱鳥、ごめんね。俺、もうすぐ仕事だから行かなきゃ…」

そう言うと、朱鳥は俺を抱きしめる力をより強くする。

「…………ぃゃ………………行かないでっ……」

朱鳥…………

グズグズとしている朱鳥は、まるで子供のようだ。

……もしかして、また朦朧としてるのかもしれない。

「朱鳥、ごめんね。俺、仕事あるの。行かないと仕事遅れちゃう。あとでまた来てあげるから、一旦ベッド戻ろ?ね?」

そう言って、俺は半ば無理矢理に朱鳥をベッドに寝かせる。

「やぁっ!!…楓摩………………グスッ…行かないでっ!!!!」

「大丈夫、大丈夫。ほら、手握ってるでしょ?大丈夫だから。」

そう言ってなだめようとするけど、朱鳥はずっと泣いてばかり。

…とうとう、俺も痺れを切らして、席を立ち上がった。

「ごめん。やっぱ、仕事は行かないと。また、後でくるからさ。」

そう言って朱鳥に背を向けて、俺は病室を出ようとする。

すると

ドサッ

驚いて振り向くと、朱鳥が床に倒れている。

「朱鳥っ!?」

「………………ふ…………ま……い…かない……で…………」

朱鳥は、そう荒い息をしながら言うと、スッと目を閉じた。