コンコンッ

「朱鳥、入るよー」

そっと、ドアを開けて病室へ入ると、朱鳥は、こちらに背を向けて眠っていた。

「ん………………んぅ…はぁ……はぁ……」

イルカの抱き枕を抱きしめながら、苦しそうに眠っている。

俺は、そっと、朱鳥の手を握った。

…すると、朱鳥はうっすらと目を開けた。

「…ふぅま…………」

朱鳥は、そう言って涙を流す。

「朱鳥、どうした?メッセージ見たよ。……大丈夫?そんなに、辛いの?」

そう聞くと、朱鳥はコクンと頷く。

「熱、あるかな?計ってもいい?」

コクン

俺は、白衣のポケットから体温計を取り出して朱鳥の脇に挟む。

ピピピピピッ♪

ピピピピピッ♪

体温計の表示を見ると、そこには38.9℃の文字。

「……結構高いね。…これから、また上がってくるかもしれないし……、久翔呼んであげるから解熱剤入れてもらお?」

俺がそう言うと、朱鳥はゆっくり首を横に振る。

「…このくらいで……迷惑…………かけられない…」

そう言って、朱鳥は辛そう目をつぶる。

「……でも、朱鳥、我慢しちゃダメだよ。辛いでしょ?」

「そう…だけど……」

朱鳥は、きっと自分よりも相手の事を考えて、遠慮してるんだよね……

朱鳥の優しい所はいいんだけど…なんも、我慢しなくていいのに……

朱鳥は、優しすぎるんだよ…

もっと、俺らに頼っていいのに

「朱鳥」

俺は、そう言って、朱鳥の頭を撫でる。

「朱鳥はさ、久翔とか俺に迷惑かかると思って、頼ってくれないの?……でもね、俺らは迷惑だなんて思ってないし、もっと頼ってほしいって思ってるんだよ?俺、朱鳥が苦しそうにしてるのを見るの辛いし、1人で我慢してるって思うと胸が痛くなる。…もっと、頼って?辛かったら、言っていいから。」

俺がそう言うと、朱鳥はスーッと涙を一筋流した。

それから、朱鳥はヨロヨロと弱々しく起き上がり、それから俺に抱きついた。

「楓摩………辛い…」

そう言って、涙を流し続ける朱鳥を、俺はずっと抱きしめて、背中をさすり続けた。