ガチャッ

「ただいまー」

「あっ、楓摩!!」

楓摩が帰ってきた。

私は、すぐに柚月を抱き抱えたまま、楓摩の所まで急ぐ。

「あ、朱鳥、起きてたの…って、どうした?そんなに慌てて」

「楓摩、柚月が!柚月が熱出したの…どうしよ……」

私がそう言うと、楓摩は急に真剣な顔になって、ちょっと待ってて、と言って部屋に行った。









それから、何分もしないうちに、楓摩はリビングに来た。

ワイシャツ姿に、いくつかの道具を持っている。

「おまたせ。ちょっと診させて。柚月、ごめんね、ちょっと診察するよー」

私が柚月を抱っこして、楓摩は柚月の熱を計ったり、聴診をしたりしている。

「熱、39度超えてるね。少し、グッタリともしてるみたいだし、明日、朝イチで病院行こっか。もしかしたら、まだ熱が上がってる途中かも知れないから、今夜は様子見なきゃだね…」

そう言って楓摩は、柚月の頭を優しく撫でた。

「ありがとう、楓摩。…ごめんね、帰ってきたばっかりなのに。」

「ううん。大丈夫だよ。それより、柚月の熱に気付いてくれてありがとう。」

そう言って、楓摩は私の頭も撫でてくれた。

「ぁ…ぁぅっ……まんまぁ………」

柚月が泣き始めたと思い柚月を抱っこしようと手を伸ばしたその時




「ゲホッ」

柚月は、突然吐いたあと、カクカクと小さく震え始めた。

「えっ!?柚月!?」

頭の中で映像がフラッシュバックする。

楓摩が、インフルエンザで痙攣してた時の記憶……

「楓摩っ!!」

「朱鳥、落ち着いて。大丈夫。柚月、ちょっと顔横向けるねー」

楓摩は、そう言いながら柚月の顔を横に向け、その他に服のボタンを外したり、時計を確認したりする。

それから

「……柚月、柚月?大丈夫?」

楓摩がそう言ったのを聞いて、柚月の方を向く。

すると、柚月は痙攣が収まったようで、少しグッタリとしていた。

「意識は、あるみたいだね。おーい。あ、ほら反応した。…熱性痙攣かな、これなら、大丈夫か。」

楓摩は、そう言って、柚月をゆっくりと抱き上げた。

「よしよし、可哀想に。熱、辛いね。解熱剤使って下げちゃうか。」

そう言って、柚月の頭を優しく撫でたあと、楓摩は再び柚月を寝かせた。

それから、さっき持ってきた道具の中から座薬を取り出す。

「柚月、ちょーっと気持ち悪いけど、我慢してね」

「んぅっ…………」

「大丈夫だよー。すぐ終わるから。…………よし、終わり。偉いね~」

そう楓摩が言うと

「あぅ」

柚月はそう返事をした。

私は、そんなやり取りを見て、少しだけホッとした。

楓摩がいるなら大丈夫。

そう安心できた。