そんなある日

夕方、いつもの時間に楓摩が病室に来た。

でも、今日は北斗先生も一緒だ。

もしかしたら、おじさんの話をされるのかも……

そう思って、少しだけ身構えてしまう。

「朱鳥、ちょっと辛いかもしれないけど、おじさんの話、していい?」

ほら、やっぱり。

私は、少し躊躇気味に頷く。

すると、北斗先生がベッド横の椅子に座って、楓摩は反対側に立って、手を握ってくれる。

「あのね、朱鳥ちゃん、この前、手紙、読んだよね?」

コクン

「けど、文字だけじゃ、まだ信じきれないと思う。だから、前から、慣れるようにって練習もしてきたし、もうそろそろ、会ってみない?」

ドクン

心臓が大きく脈を打つ。

体が嫌だっていうみたいに、鼓動が早くなっていく。

「やっぱり、怖いよね。ちょっと、脈、早くなった。」

そう言って、楓摩は私の背中をさする。

「怖いし、不安なのも承知なんだ。それでも、1回でもいいから会って話し合わないと、朱鳥ちゃんも心の整理がつかないで、熱が続くかもしれない。ストレスを無くすには問題を根本から解決するしかないんだ。」

「大丈夫。話し合いの時には俺達もついてるから。だから、少しでも朱鳥の心が楽になるように話し合いしてみない?」

話し合い……?

おじさんと会うんでしょ?

怖い

けど、この心のモヤモヤを取り払うには、嫌な夢を見たくないなら、話し合うしかないんだよね……

私は、まだ不安いっぱいながらも、小さく頷いた。