「心が苦しいの……。色んな感情がグルグルして苦しい。」

「それ、どんな感情か教えてくれる?」

「……怖さ、不安さ、寂しさ、自己嫌悪…………あとは、よく分からないけど、悲しくなる。周りの人が、何か言ってくるの。"うるさい"とか"気持ち悪い"とか"迷惑"とか"消えろ""死ね"……とか…」

「…………それも、夢で?」

「夢もだけど、たまに不安で眠れない時に、声が聞こえてくる気がする…」

「楓摩がそばにいてくれる時も苦しい?」

「……少し、苦しくなくなるけど、そうやって甘えてるのもダメじゃないかな…って。私、大人なのに、お母さんなのに、なにも出来てない。……それが、やるせない。」

「甘えることって、ダメなことかな?俺は、大人だろうが、子供だろうが甘えるのは人間の性質だと思うな。朱鳥ちゃんは、子供の頃に甘えることが出来なかったから、大人になった今いっぱい甘える。昔我慢してたんだから、今は我慢しなくていいじゃん。甘えることは恥ずかしいことじゃないよ。」

「でも……お母さんなのに、何も出来ないのは情けない」

「何も出来ない?そんなことないじゃん。朱鳥ちゃんは、二人を愛してあげることができるでしょ?朱鳥ちゃんはすごいんだよ。昔、虐待されていた子は大人になった時に自分の子供まで虐待するっていう傾向があるの。けど、朱鳥ちゃんは違う。ちゃんと、二人を愛してあげられる。それが、家事よりも遊んであげることよりも、何よりも大事なんだよ」