「朱鳥っ!!」

飛び込むように病室に入ると、数人の看護師さんと苦しそうにする朱鳥がいた。

"急激に熱が上がって、危ない状況です"

そう連絡を受けた時、俺は心臓が止まるかと思った。

俺が駆けつけると、朱鳥はうっすらとだけ目を開けて、荒い息をしている。

目は少し虚ろで、体中に沢山汗をかいている。

看護師さんは必死に冷やしてくれているらしいけど、熱は42度近いという。

「朱鳥、頑張れ…。俺、ここにいるからね。」

そう手を握ると、ものすごい弱い力で握り返される。

「………………ふ…………ま……」

焦点の定まっていない目で朱鳥は俺の方を向く。

「どうしたの?」

「………たし………この…まま……………………んじゃう……の…………?」

"私このまま死んじゃうの?"

とぎれとぎれだけど、ハッキリとそう聞こえた。

急激な熱の上昇は、死を招く。

熱が上がりすぎると、体中の良い細胞まで殺してしまうから。

でも……

「大丈夫。朱鳥は、強いから大丈夫だよ。いっぱい、辛いのも乗り越えたから。大丈夫。死なない。絶対大丈夫。」

そう言って、もう一度手を握ってあげると、朱鳥はスーッと涙を流した。

「頑張れ。頑張れ……。」

すぐぬるくなってしまう冷えピタを貼り替えたり、保冷剤を当ててあげたり

俺に出来る限りのことはやった。

……あとは、朱鳥次第。

でも、朱鳥なら強いから大丈夫…そう思っていた時__

「っ!!!!やぁっ!!……やだっ、やだっ!!!!」

朱鳥は、急にそう叫んで頭を抱えた。

もしかして……幻覚?

寝てないから夢ではないから、多分そうだろう。

おじさんが居て、また暴力を振るわれる幻覚を見ているのかもしれない。

「朱鳥、大丈夫だよ、落ち着いて。おじさんはいないよ。熱高くて、変なもの見えるんだね…」

そう言って、なだめてあげるけど、それでも朱鳥は涙を流し続ける。

「…………めんなさい……ごめんなさい…もう、許して…………」

熱が高い上に、軽いパニック状態。

これは、結構体にこたえるよな……

いやいや と顔を振る朱鳥をギュッ抱きしめ、そっと背中を撫でる。

「やっ……!!」

最初こそ、抵抗していたけど、朱鳥は徐々に落ち着きを取り戻して、それから気を失うように眠りについた。

インフルエンザとしての、発熱の期間はもうとっくに終わっているはずなのに、まだ続くのは、やっぱり久翔が言うようにストレスなのかもしれない。

根本の原因であるおじさんとの和解…

これを早く進めなきゃ……