「ん……やだ……………やめ…」

その日の夜、俺はまた朱鳥の声で目が覚めた。

きっと、おじさんの夢だろう。

「朱鳥、大丈夫?」

少し声をかけてやると、朱鳥は薄目を開けて、ふらふらと俺に抱きついてきた。

少し目に涙が浮かんでいる。

「………………楓摩…くる……しい…………息…くるし……」

確認すると、過呼吸までは至っていないものの、少し息が乱れている。

「朱鳥、落ち着いてね。俺の指示に合わせて息して」

「んっ……できない…………苦しっ…」

朱鳥は、少し焦っているのか、だんだんともっと息が荒くなってくる。

「大丈夫だよ、大丈夫。落ち着いて、ゆっくり息しよう。」

「…………ん……んっ……できない…できない……」

「大丈夫、大丈夫。ゆっくり深呼吸。吸って……吐いて……吸って……吐いて」

少しあやす様に、背中を撫でて呼吸を促す。

「ケホッ…………ゲホッ…ゲホッゴホッ………」

喘息の咳も出てきたか……

「朱鳥、苦しいね。ちょっとリビング行こっか。抱っこするね。よしよし。」

苦しそうに、俺の服をキュッと掴む朱鳥を抱き上げて、俺はリビングへと向かった。

リビングのソファに座らせると、常備してある喘息の発作用の吸入器を渡す。

「朱鳥、ゆっくり、ゆっくり。大丈夫。大丈夫。」

少しずつ、吸入薬を吸わせて、呼吸を促しているうちに、朱鳥は落ち着きを取り戻してきた。

眠たいのか、目が少しトロンとしている。

それに、少し体温が高いのか、伝わってくる熱がいつもより暖かい。

そっと、体温計を取って熱を測ると、38.7の文字。

目がトロンとしているのは、眠いだけじゃなくて、久しぶりの熱で、少し体がだるいのかもしれない。

「ん…………楓摩…」

「どうした?俺はここにいるからね。」

そう言って手を繋いであげると、朱鳥は弱い力で握り返してくれた。