……でも、それは逆効果…というか、全然気持ちは収まらなかった。

むしろ、朱鳥に会いたくなった。

今すぐ抱きしめたい。

そう思った時には、もう足は動いていた。









「ただいま」

そう言って家に入ると、パタパタと軽い足取りで朱鳥が出迎えに来てくれる。

「楓摩、おかえりなさい。……大丈夫?嫌なこと、あったの?」

さすが、朱鳥。

すぐにバレちゃう。

「……朱鳥、ギュッてしていい?俺が好きなだけ、ギューッてさせて」

「え?私は、いいけど……。というか、むしろ嬉しいな!」

「そう?じゃあ、お言葉に甘えて。」

俺は、玄関だということも関わらず、朱鳥をギュッと抱きしめた。それから、抱きしめたままリビングへ移動し、ソファの上でずっとギュッと抱きしめていた。

「楓摩、大丈夫?」

「……うん。ちょっと、腹立つことがあってね…」

「そっか。……お疲れ様です!」

そう言って小さく笑った朱鳥は、本当に可愛くて、疲れも吹き飛んでいきそうだ。

でも、それの同時に、こんなに可愛くて優しい朱鳥を傷つけたおじさんがさらに許せなくて、頭の中はグチャグチャになった。