ドクン…ドクン……

心臓の音がやけに大きく聞こえ、嫌な汗が垂れる。

「朱鳥っ!!」

俺は、驚いて急いでリビングを飛び出した。

もしかしたら、ただ朱鳥も目が覚めちゃって、リビングにいるかもしれない。

もしかしたら、トイレに行っているだけかもしれない。

もしかしたら____
















「朱鳥っ!!なにしてんのっ!!」

リビングに入って、一番最初に目に入ったのは、赤い血。

「……ふ…ま………………ダメっ……」

「なにやってんの!?やめて!!ストップ!!ねえ、朱鳥!!これ、離して!!」

カッターを持つ朱鳥の手を精一杯引き離す。

「朱鳥、ダメだよ!!こんなことしたら、朱鳥も痛いでしょ?ね?だから、やめよ?」

カッターを離させようとするのに、以外にも朱鳥の力は強くて、離すことが出来ない。

「朱鳥っ、朱鳥っ、これ、離して」

「……やぁっ………………嫌っ!!」

「朱鳥っ!!!!!!!!」

朱鳥がビクッと反応して、動きが止まる

「あ……ごめん…」

つい、怒鳴りつけてしまい、朱鳥は動きを止めて泣き出してしまった。

「うっ…………ヒック……グスッ…」

「朱鳥、大丈夫?ごめん、つい怒っちゃって…。それよりもさ、これ痛いしょ?離そ?」

そう言って、抱きしめると、朱鳥は、ポロッとカッターを床に落とした。

俺は、朱鳥を抱き上げて、ソファまで連れていく。

ソファに座らせてから、カッターを拾い、台所のゴミ箱に捨てた。

それから、自分の部屋から応急処置用の救急バッグを取りに行った。

リビングに戻ると、朱鳥はまだ泣いていて、腕から流れる血も、とても辛そうだ。

「朱鳥、ごめんね、ちょっと傷見てもいいかな?」

ウウン

「でもさ、傷深かったらあとで大変だから」

ウウン

「わかった。でも、これ以上血が流れたら困るから、包帯だけは巻かせて」

……コクン

俺は、朱鳥の手をそっと取って、包帯を巻いていく。

軽く見ただけだと、そこまで深くはなさそうだけど、何ヶ所も切られた傷は、相当、痛そうだ。

包帯を素早く巻いて、それから朱鳥の隣に腰をかける。

「朱鳥、痛い……?」

…………コクン

「痛いよね…、そうだよね。こんなに、沢山切っちゃって……。…何があったの?教えて……」

「…………ヒック……嫌…だった………こんな、自分が……みんなに、いっぱい迷惑かけて…なのに、治せなくて…………嫌で…嫌で……気付いたら…こんな事……してた…うぅ……っ……………痛いよ……」

ボロボロと涙を流して、泣き続ける

俺は、朱鳥のことをギュッと抱きしめた。

「大丈夫だよ…朱鳥。焦らなくていいんだから。………朱鳥は、優しいし、まじめだから、思い詰めちゃったんだね……。辛いよね…、ごめんね、早く気付いてあげられなくて。明日、北斗に話、聞いてもらおう?明日は、俺も着いていくよ。」

……コクン

俺は、泣き続ける朱鳥を抱きしめて、そっと声をかけ続けることしか出来なかった。

それから、朝になるまで、朱鳥は泣き続けた。