コンコンッ

軽くノックをして、朱鳥の病室に入る。

すると、朱鳥は俺に気がついたのか、少し体を起こして

「楓摩……」

とだけ言った。

「朱鳥、おはよう。その様子だと、早く起きちゃったの?」

「うん……ちょっとね…。」

「そっか。」

俺は、話をしながら、朱鳥のベッドサイドのイスに腰をかける。

「朱鳥、今日ね、少し話したいことあるんだけど…いい?」

「ん?なに?」

「うん。少し大事な話だから、よく聞いてね」

そう言った途端、とても不安そうな表情をした朱鳥の手をそっと握る。

「朱鳥ね、今まで、自分とか俺と朱鳥の2人で、トラウマ治そうと頑張ってたでしょ?」

「…………うん…」

「だけどさ、もうそろそろ、俺にもやってあげられる限界があるの。でも、朱鳥は最近、より一層辛いよね?」

「うん……」

「だからさ、今までは朱鳥が嫌がると思って、言わなかったんだけど、もうそろそろ、精神科のお医者さんに診てもらおう?」

そう言うと、朱鳥の表情が曇ったのがわかった。

明らかに"嫌"という表情。

「朱鳥はさ、そんなの嫌だって思うかもしれない。……けどね、きっと少しでも話したら、楽になってくると思うんだよね。俺は、精神科医じゃないから、カウンセリングとか、上手くできない。…でも、俺の知り合いの精神科医のやつがいるんだけど、その人は、すごく話聞くの上手だし、朱鳥の不安とか、トラウマも治してくれるかもしれない。……だからさ、今度一緒に精神科に行ってみよう?」