「んっ……はぁっ…はぁ…………やぁっ!!」

今日もうなされている朱鳥。

ココ最近は、毎日。

俺は、いつも通り朱鳥を起こしてあげる。

「朱鳥、朱鳥。大丈夫?」

そう声をかけて軽く肩を叩いてあげると、朱鳥はハッと目を覚ます。

それから、朱鳥は、夢を思い出したのか、まだ夢との区別があまりついていないのか、体育座りの体制になって頭を抱えた。

そのまま、黙って目を見開いて涙を流し続ける。

「朱鳥、大丈夫?また、嫌な夢見たんだね…」

そう言うと、朱鳥は、俺の方を少し見てから、より一層悲しそうな顔になった。

その表情は、恐怖、怯え、悲しみ、悔しさなど色々な感情が混ざりあったようだった。

「…………なんで…」

今にも消え入りそうなくらいの小さな声。

「なんで、こんなに私は……、弱いんだろ…。夢見るのも、私の心が弱いから……。昔ことも、いい加減振り払わないといけないのに……っ!!…なんで、なんで、なんで……!!自分では、変われたと思ってたのに…結局、違った…………。結局、心のどこかでは怖かったから、トラウマ…また……。」

そう言って、朱鳥はボロボロと涙をこぼし続ける。

「ほら、また。また泣いてる。泣き止まなきゃいけないのに……。泣いてなんか、いられないのに…。お母さんなのに…………私。…しっかりしなくちゃ……でもっ…でも………………もう……どうすればいいのっ……私…私…………」

唇をギュッと噛み締めて、苦しそうな顔。

こんな時、どんな言葉をかけてあげればいいのか……

情けないことに、何も出てこない。

何も出来ず、朱鳥の背中をそっとさすった。

「大丈夫……。そんなに、焦らなくていいから…ね?」

何度もそう言ったけど、朱鳥は首を横に振った。

「ダメ……ダメなの……………もう…充分ゆっくりした……けど、ダメだった………………だから、もう急がなきゃ…二人にも寂しい思いさせてるし…」

そう言った朱鳥の顔は相当思い詰めていた。