「…すか、朱鳥」

ハッとして目を開けると、目の前に心配顔の楓摩がいた。

「朱鳥、大丈夫?顔色悪いし、震えてるじゃん……」

そう言って、楓摩は、最近よくやってくれるようにベッドの上に座って、膝の上に私を乗せるようにして抱きしめてくれる。

「嫌なことは、無理に思い出さなくてもいいんだよ。……ちょっとずつ、時間をかけて、治していこう?」

どうやら、楓摩にはお見通し。

「…………楓摩、ごめんね…。わ、私……楓摩がせっかく、私のトラウマ…治してくれたのに………………また、振り出しに戻っちゃった…。……また、怖くなっちゃった…」

涙がボロボロとこぼれる

楓摩は、ハンカチで私の涙を拭きながら

「朱鳥のせいじゃないよ。朱鳥は、悪くない。だから、気に病まなくていいからね。大丈夫だから。朱鳥なら、大丈夫。朱鳥が怖いなら、俺がそばにいる。…外来とかで来れない時以外なら、いつでも駆けつけるよ。眠れないなら、眠れるまで隣にいてあげる。不安になったら、いつでも"大丈夫"って言って、理由も教えてあげるよ。来れる時は、できるだけ、朝と夜の回診とかの時も付いていてあげるから。
怖いとは思うけど、ちょっとずつ慣れていこう?朱鳥が無理そうな時は、俺が久翔に言ってあげる。」

そう言って楓摩は、ずっと私の背中をさすって、心地よい声で語りかけてくれる。

「大丈夫、大丈夫」

私を落ち着かせてくれる魔法の言葉

「俺がそばにいるからね」

これほど、頼もしい言葉はない

私、楓摩がいてくれるなら、もう一度、この恐怖に勝てるかもしれない…

そう思えた。