「朱鳥ちゃん、ちょっとチクッとするからねー」

そう言って手際よく解熱剤を打つ。

それから、持ってきたクーラーボックスから、冷えピタと保冷剤を取り出して、額、脇の下、首周りなどにつけていく。

そうしているうちに、前苑は少し意識が鮮明となってきたようで、目尻から、少し涙を流した。

「ごめんね、辛いね…。少ししたら、薬も効いてくるからね」

そう言いながらも冷静に処置を進める久翔先生は本当にすごいと思う。

「大丈夫、大丈夫。ちょっと、苦しそうだから酸素マスクつけるよ」

そう言って、前苑の事も考慮しながら処置をしていく。

処置が一通り終わると、前苑は少し体が楽になったのか、体の力が抜けたようで、そのまま眠ってしまった。

「久翔先生、お疲れさまです。…さすがでした。そんなに手際良くかつ患者さんのことも考えて処置できて、俺、すごい尊敬します!」

「そう?俺なんか、楓摩と比べたら足元にも及ばないよ。」

そう言って、謙遜しながらも、視線の先では、前苑のことを見ていて、そこも口には出さなかったが、また尊敬した。

久翔先生がついてきてくれるのは、この行きだけ。

俺も、医療行為はできないけど、アメリカに行って、前苑が苦しそうだったら、こうして応急処置できるかな…

楓摩先生に託されたから。

……前苑のためにも、先生のためにも…頑張らなきゃ。