中庭に着いて、俺は少し驚いた。

……中庭に居たのは、小さくしゃくりをあげて泣く朱鳥ちゃんだった。

俺は、そっと朱鳥ちゃんに近づいて、朱鳥に声をかける。

「…朱鳥ちゃん…………」

そう言うと、朱鳥ちゃんはとても驚いたようにビクッとして、俺を見るや否や、涙を一生懸命拭いた。

「ひ、陽向先生………どうしたん…ですか……」

「どうしたの はこっちのセリフでしょ。…朱鳥ちゃんこそ、こんな朝早くから中庭なんて、どうしたの?」

俺がそう聞くと、朱鳥ちゃんは作ったような笑を浮かべた。

「ごめんなさい。ちょっと、目が覚めちゃって……」

「…でも、泣いてたじゃん…………」

そう言うと、朱鳥ちゃんは、明らかに同様して…………そして、諦めたように、涙をこぼしてから、笑った。

「…このこと、楓摩には、秘密にしてください。………楓摩には、知られたくないんです。」

そう言う朱鳥ちゃんの頭を俺はポンポンと撫でた。

「そっか。じゃあ、楓摩には秘密にしとくな。……でもさ、なんで、泣いてたのかは、教えてくれない…かな……?」

朱鳥ちゃんの顔を覗き込むように言うと、朱鳥ちゃんは、小さく笑った。

「……泣いてた理由………………ですか…?」

「うん」

「…それは……」