だっていきなりお姫様抱っこするんだもん。そりゃあ、驚くよ………………。
「しっかり掴まってろよ」
「え?……………………えぇ!!!??」
そんな言葉と同時に、忍者化のように上の木へ飛び上がる。
そして、木と木を飛び渡り、住宅地では家の屋根と屋根と飛び渡った。
こんなのは普通の人間じゃ到底できない…………………。
そう思いつつもお母さんの元に早く行きたくて、そんな事を言っている余裕がなかった。
「この辺りか?」
「はい!……………………あそこです!」
1つだけ目立つ赤い屋根。
私が指差すと、下へと降りてくれた。
「お母さん………………!!!!」
中へ入ると、そこはまさに地獄だった。
「酷いな、これは…………」
「まさしく荒らした後、ですよね?」
あちこちに散らばった小物たち。
真っ二つに折れた机。
テレビはコンセントを繋いだまま、下へ落ちている。
机の上には今日の晩ごはんらしき物たちが置かれていた。
「これ…………………」
私の大好きなシチュー…………………。
お母さんはどんな気持ちで私の帰りを待っていたのだろう……………………。
台所もかなり悲惨な光景だった。
「………………………っ!!?お母………さん?」
血塗れで力尽きたようにうつ伏せで倒れる女の人。
そうだ。これはお母さんだ。
「嘘だよね?」
胸に耳を当てるが、心臓の音は聞こえない。
「嘘だ……………嘘だ……………………」
いつからこの世界は残酷になったのだろう。
大切なものを急に奪われ、何もかも失った私。
あとに何が残るっていうの……………………?
「う……………っ、これは悲惨だ。そこにいるのは麗子様だな。見たところ結界を自分ではなく誰かに使って力尽きてるってところ」
結界を誰か使って……………?
それってまさか。
「あの時の結界ですかね?」
「あぁ………相手もビックリしていたやつか。娘を守るために自分を犠牲にしたのかこの方は」
私を守りために…………?
「それほど守りたかったんだな」
………………こんな私を?
約束を破ったのに?
……………………そんな。



