しかし、誕生日当日まで結局紗綾に断りを入れることが出来ずにいた。
怒られると思ったからだ。
失望して、見放すんじゃないかって少し怖かった。
「そういえば理科のあの先生、入院したんだってさ。何があったんだろうね〜?」
「入院…………したんだ」
「心配なの?全く美麗は優しいんだから」
……………あの日の事を私は覚えているのに、周りは覚えていない。
紗綾もなぜ私が昼休みにどこかへ行っていたのか忘れていた。
ただ、私と月路くんが理科室をちょうど通りかかり、倒れた先生を発見したことになっている。
それは、もしかしたら月路くんの仕業なのかな……………?
でも人の記憶をイジるなんて普通の人には出来ないし、そもそもあそこで起こった出来事は普通じゃない。
月路くんはエスパーか何かなのかな……………?
「見ろよ。アイツ変な本見てるし」
「この地域の逸話?変なの(笑)」
相変わらず月路くんに対する周りの反応は変わっていない。
未だによく聞く。
『変な人だ』って。
確かに変だよ?
でもね、みんなが思ってるようなことじゃない。
きっと深く知れば、みんな仲良くなれる。
「美麗もそう思うだろ?」
「え、何が?」
「アイツだよ。いつも1人でああしてる暗いやつとは、例えお前でも友達になりたくないって思うだろ?」
「ちょっと!美麗に何ていう質問してんのよ!」
即座に隣りにいた紗綾が反応する。
「いいじゃねぇかよ。本当の事を言ってるわけだし」
………………本当のこと。
私が思う本当の月路くんは……………。
「いい人だよ。私は暗いとは思わないし、友達になりたくないって思わないよ」
「美麗………?」
「…………絡んでみるときっと良さが分かると思う。確かにちょっと近寄りがたいし、無視されるかもしれないけど、それって単に仲良くなるのが怖いんだよ月路くんは」
「………は?俺はそんなこと「私は月路くんと友達になりたい!……です」」
「「「……………………………」」」
「美麗……」
「紗綾ちゃん、私がみた月路くんは怖い人じゃなかったの。優しい面もあった。だから……」
「別にいいんじゃない?私も絡みもしないで、誤解していたのかも………。ってことで、今度からよろしくね!月路くん(笑)」
紗綾ちゃん………。
「じゃあ、俺も…………!!!」
「俺だって………絡みたいし」
みんな…………………っ!
「はぁ………面倒なことになった」
当人の月路くんは何だか鬱陶しそうだけど、これもみんなを知れるいい機会だと思う。



