同じように手があり、足があり、胴体がある生物。しかし、人間と決定的に違うのが顔だ。
顔だけ、その生物は違う形をしていた。
まるで烏のように黒々として嘴があり、不気味な赤褐色の瞳、黒色の羽毛に包まれていたのだった。
一見すれば被り物のように見える。
人間と同じ体をしているが、頭だけは烏。妙な姿のそれは、静まり返った都会の道路の中心に立つ。
コンクリートに描かれた横断歩道を興味深く見つめ、周りに建ついくつものビルをぐるりと見渡す。
「ここは、人間がいた星か」
人ならざる者は、低い声で呟く。
誰にも通じない、彼だけの言語が烏の嘴から発せられる。
「この星は、実に興味深い。周りを見れば彼らがいた頃の時間が見えるではないか」
人ならざる者の、赤褐色の瞳には地球にいた過去の人間が見えていた。
地球で起こったことが、全てスライドショーのように彼の瞳には映っていた。