曇天の日のこと。
人々は皆、自分が成すべきことをするために目的地へと足を運ぶ。
それぞれの方向を向き、それぞれの表情や感情を持ちながら歩みを進める。
靴がコンクリートを叩く音が何重にも重なり、車が滑走する音や人の様々な声色。それを、雑音に聞こえる者もいれば、心地よい音に聞こえる者もいる。
しかしそれは、突如として姿を消した。
音もなく。
瞬きをする暇がないくらいの速さで、忽然と姿を消したのだった。
残っているのは、静かに呼吸をする草花、言葉を喋らない動物、聳え立つ建物、何処かを流れる川や湖、海だけ。
辺りは静まり返り、無音だけが響く。
すると静寂だけの地球に、何かが現れる。
それは、平均の人間と同じような体格をしている何か。