「いずみちゃん、待った?」
放課後、階段の踊り場に現れた先輩はいつもの篠田先輩だった。
午後の授業が耳に入らないくらい、言いたいことを頭の中で反芻したのにいざ目の前にするとやっぱりどぎまぎする。
でも、言わなきゃ。
せっかく背中を押してもらったんだ。
「先輩、呼び出してごめんなさい。昨日のことでどうしても言いたいことがあって…
昨日、みじめになりたくなくて言えなかったんです。」
深呼吸して、先輩の目を見る。
「私、先輩のことまだ好きです。終わりにしたくないです」
先輩は、目の前にかがんで真剣に話を聞いてくれた。
「気持ちは嬉しいし、勝手だってわかってるけど。いずみちゃんのこと、想ってやれない。ごめん。
正直になってくれてありがとう」
先輩はゆっくり、言葉を選びながらそう言って、立ち上がった。
やっぱりよかった、話してみて。
気持ちがすっきりして、前向きになれる気がしてくる。
先輩と別れた後、鞄を取るために教室に行くと、森下くんが机に突っ伏してた。
