「カイル!!なーにぼーっとしてんだよ!!」



声をかけられ、ふと我に返る。



「……俺、ぼーっとしてた?」

「してた。……まったく。本好きなお前に付き合ってせっかく図書室に来てやったのに、本を見つめたまま動かないとは珍しい読書の仕方だな?カイル。」











『カイル』…………カイル・アトリティカ。


それが、俺の名前。







「ごめんね。ベン。………妄想にふけってたよ。」


「まったく。歴史の本読んでどこに妄想にふける余裕があんだよ?歴史ってのはな、史実しか載ってねーんだよ。妄想の欠片もねーの!」







彼はベン。ベンジャミン・マキシマス。



俺の一番の親友で、幼馴染だ。



「とにかくだ。カイル。その本借りるのかよ?もう閉館時間だぜ。」

「え、ほんと?待って!借りる!!」

「ちょ、おい!!」


急いで本を借りて、外に出た。

後ろから少し不機嫌そうに、ベンがくる。





俺は、本が好きだ。とくに、歴史本か、事実が書いてある本が好きだ。



でも、フィクションも嫌いじゃない。妄想がふくらむし、本当にあるかどうか気になる。


「ごめんね?ベン。ついてきてもらっちゃって。」

「いやいいぜ。お前一人にしといたら閉館しても気付かれずに閉められてそうだからな。」

「やめてよ。リアルにありそうじゃんか。」


二人で笑いながら、道を下る。



ここエルメスは、市場が盛んに開かれている、都会……な方な街。



今日も夕市が開かれていて、みんなが賑わっている。


「そんじゃ、俺はもう帰るわ。」

「あ、うん。ベンありがとね!」



おうよ!という声を聞きながら、俺は家に帰った。