「ごめん……俺、ミカに昨日告白されて、付き合うことになったんだ」



中学時代に片思いしていた相手・翔太に言われた言葉。

それも、亜美とミカに背中を押してもらって、勇気を出したバレンタインに。


頭が真っ白になった。

2人に勇気をもらって、翔太を普段使わない空き教室に呼び出してわざわざフラれに行った。

「なんか……ごめんな。せっかく作ってくれたのに、ミカに悪いから受け取れない……ごめん」

差し出したチョコレートも返された。


私は、今、何をしているんだろう。

なんで?
昨日からミカと付き合ってるって、なに?

私が翔太を好きになったの、知ってたのに。
むしろ、話すきっかけを作ってくれたり、相談にのってくれたのに。

ミカも、翔太が好きだったの?
私に遠慮して、言えなかったの?
友達にも言えなくて、苦しい思いをしてきたの?

涙なんて出なかった。
ただ、心は重かった。


「チホ!どうだった……って、チョコ、渡せなかったの?」

教室に戻ると待っていた亜美が、私の手元を見て泣きそうな顔になる。
ミカも私を無表情で見ている。

「えっと……今は、混乱してうまく言葉が出ないけど……ミカ、ごめんね」

ミカをまっすぐ見つめる。

「んー、別に翔太がちゃんと断ったならいいし」

亜美がはっとミカを見る。

「どういうこと?」

「ミカは、ミカのしたいようにしただけ。翔太はミカが良かったみたい」


無表情で言い切ったあと、いつものほんわかした小動物のような笑顔を見せる。

「じゃ、帰るね」

るん♪と教室を飛び出したミカを、引き留めることも、言葉をかけることも




出来なかった……。