「そいや、今日青年見た」

「はぁ?」

なにそれ、と亜美が笑う。

「ん、なんかチャリの青年」

茶色い柔らかそうな髪を思い出すと、亜美が目をくりっとさせる。

「いや、なにで笑ってんの。てか、今日、初笑いがそれ?」

「え?笑ってた?」

無自覚って怖い。

「イケメンだったの?」

「いや、逆光で顔まではあんまり」

「ていうか、これなんの話だっけ」

無意味な会話だなぁと笑う亜美が、不意に真剣な顔になる。

「チホもさ……そろそろ恋してもいいんじゃない?あの事、もう、さ……」


あの事……。



私と亜美には、中学時代もう一人仲のいい友人がいた。

チホと亜美とミカ。

元々亜美と同じ小学校で、仲の良かったミカ。

いつの間にか3人で仲良くなった。

たくさん遊んで、同じ部活に入って、毎日一緒だった。

簡単に言うと、私とミカは同じ人を好きになった。


ただ、それだけ。

うん、それだけなんだけど……。