ハートのクリップ

「ふぁ~、朝は眠い~~~」

あくびを噛み殺しながら、学校までの道をフラフラと歩く。

学校の前では、鬼のような先生がバットを持って立っている。

(鬼がいる)

なるべく目を合わせんとこ~と思いながら下を向くと、すぐそばでキュッと自転車のブレーキ音が聞こえる。

「っとごめん!あっぶね~」

茶色い髪が、朝日で透けて見えた。

真っ白い歯が輝く、爽やかな青年……。

制服ではないから、大学生?

でも、スーツにリュックで自転車は学校の門へと向いている。

「わりぃね。気を付けまーす」

颯爽と走り去る青年。


「お前さっき先生のこと鬼がいるって思っただろ。先生は鬼じゃない。おはよう」

鬼バットはエスパーなのだろうか。

文句を言いつつおはようとあいさつをされ、小さめにあいさつをする。

「あ、ちなみに先生!正門入ったらチャリ降りて!!」

鬼が青年の背中に声をかけた。

「あ~~い、すんませ~ん」


あぁ、先生なんだ。


その時は、そんなことを思っていた。



「ねぇ、チホ……朝弱すぎじゃない?」

亜美が、机で前髪を編み込みながらちらりと私を見る。

「朝食べてきてないでしょ」

「うーん。夕べ残したハンバーグとサラダと食パン3枚とスープとヨーグルトと……あと……」

「いや、すげー食べてら」

じゃあ、なんでそんなに青白くて死んだ顔してんの、と笑う。