「チーホ!亜美ー!ひっさしぶりー!!」

日曜日、待ち合わせ場所に行くと、連絡をくれた元クラスメイトの紗織が手をぶんぶんと振る。

「ちょ、近い……」

「やっだー!チホ相変わらずクール!てか、背伸びた?可愛い!!」

なにが?と言いながら周りを見ると、懐かしい顔ぶれが揃っている。

「あ……」

「チホ……」

かすれた声で私の名前を呼んだのは、少し大人っぽくなった翔太。

「久しぶり」

あぁ、と言いながら翔太は気まずそうに目を逸らした。

「元気だった?てか、ミカは?」

来ないの?と聞こうとしたとき、翔太の目が悲しそうに揺れた。



「別れたよ、ミカとは」

「そうなんだ」

意外だなと思ったけれど、ここは冷静に冷静に、と自分に言い聞かせる。

さすがに自分をフッた相手の失恋話に食いつくほど、落ちぶれてはいない。

「ミカは、チホに対抗してただけだった。俺を好きなわけではなかったんだ」



やめて。



「チホのモノを奪い取ったっていう事実が欲しかっただけなんだ」



やめて。

もう、そんな話聞きたくない。



「あそ。ご愁傷様」

「なんだそれ、冷たくない?」

苦笑いした顔は、あのバレンタインの日と同じだった。



「チホ、中入るって、あ、悪人翔太久しぶり」

亜美が翔太のみぞおちにグーを入れる。

「あ、いてぇ、この力、女子じゃねぇ」



わいわいと騒ぐ友人たちと部屋に入る頃には、気持ちが落ち着いてきた。





私は、この蒼い闇から抜け出すんだ。