「チホは、先生が好きなんじゃない?」

まさか、と答えるも、好きってこんな気持ちじゃない。と決めつけたい自分がいた。

「チホはさ、あの時から恋すること怖いんだよね。いいなって思った人を私に言えないくらい」

知ってたんだ、と言うと、私を誰だと思ってんだーと胸を張って見せる。

「ごめんね……どこかで、ミカにとられちゃったこと、傷ついちゃったんだと思う。亜美に好きになった人打ち明けたからって、わざととるようなことしないのは分かってるのに。ごめんね」

もう謝んなって、と亜美が肩を抱く。



人は、こんなに憶病なんだろうか。

恋って楽しいだけじゃないんだ。

同じクラスで、授業中に目が合ったり、一緒に帰ったり、毎日が楽しいんじゃないんだ。

でも、先生が好きって……。

夕焼けの空を見上げると、先生の笑顔が浮かび、また、風の音が聞こえた。




恋は楽しいものじゃない。

恋は、怖いもの……。





でも、違うよ、と言いたげな優しい風が吹いた。