付き合う前じゃありえなかった。
小野寺くんが授業をさぼるとか、遅刻をしてくるとか。
そのときはたいてい女の子が一緒だった。
私の知らない小野寺くんになっていくのが寂しくて、苦しくて。
毎日のように泣いていた。
「でも、琴乃じゃないとだめだった。
僕の心を満たしてくれるのは琴乃なんだ。
努力してノルマをこなして、やっと母さんに僕自身を認めてもらえた。
だからもう、琴乃と付き合ってもなにも言われない」
「…………」
「僕らを引き離すものも、壁もなにもないんだよ」
住む世界が違う。
同じ地球上、空の下に暮らしているのにおかしな話だ。
だけど、実際に世界は違った。
私は現実を知った。
いまさらなにを言われても、実際に体験して感じたことは覆らない。



