ザーッ…

(…外がうるさくて眠れない…)

深夜むくっと起きて目を擦った。
まだ朝方にも満たない時間。
このまま電気をつけて起きてしまうのはなんだか勿体なくてこのまま布団に潜ったままでいようと思った。

もうすぐ中間だというのになんだか今回陽くんが頭から離れなくてなかなか精が出ない。このままだと…いや、そんな最低なこと考えたくもない。
(やっぱり起きて勉強しようかな…。)夜の空気に吸い込まれそうな感じがして怖くて慌てて目を閉じた。

プルルルルル プルルルルル
突如携帯の着信音がなった。

「こんな時間に誰だろう…?」

ガチャッ

「も、もしもし」

「…あ、亜紀?久しぶりだね。覚えてる?」

「陽くん…?陽くん…!」

「亜紀。」

「嘘…会いたかったよ!今はどこにいるの?会いたいよ…。」

「うん。戻ってくるのが決まったんだ。僕も会いたいから。」

涙が溢れた。

「陽くん…!!」

「またあしたね。」

「うん!」

涙が溢れた顔で強く頷いた。
そこで意識が途絶えた。

「…夢か…。」

まあ、そうではないかとは思っていた。帰ってこないこと分かってた。(夢にまで出てくるほど陽くんに会いたい。)重症なのかな。ほんとに会いたい。
今日の朝陽くんが学校にいればどれだけ幸せなのだろう。

「おはよ。あ、ゆな!」

「あっきー!会いたかった!」

「うん。私も!」

「…僕もいんだけど。亜紀は僕がいなくてもいいんだ?」

少し悲しそうに目を伏せたこうた君。うわぁぁあ!すっかり忘れてた…。

「ごめん!こうた君おはよ!いなきゃだめだよ!」

焦って答えたら弟にしたいぐらいの上目遣いで見てきた。

「ほんと?」

「ほんと!」

「そっか」

力が抜けたように笑うこうた君は本当に嬉しそうで私なんかにあんなに喜んでもらえるなんてって思って、私も嬉しかった。

「はぁ…中間まで一週間切った…もう無理…」

「いや、お前勉強してないじゃん。」

「あー…中間…大丈夫かなぁ…」

「亜紀まで!?うーん…べ、勉強会だ!」

「「ええー!」」

「楽しそう!」
「めんどくさい!」

「おいゆな。」

勉強会か!この三人と出来るなんて嬉しいなぁ…!

「日にち決めちゃおっか」

「いや、今日から毎日。」

おお!こうた君頭いいから教えてもらえるといいなあ!

「はい!毎日は無理です!」

勢いよく手を挙げたゆなにビシッとこうた君がツッコミを入れた。

「あほ。追試になったら夏休み潰れるんだぞ?」

「ひぃぃ!夏が…海が…遠のいていく…。」

ガクッと項垂れるゆなを横目にこうた君は私に顔を向けた。

「亜紀は?予定…ある?」

上目遣いで聞かれてすぐに首を横に振った。

「無いよ!」

「分かった。」

「楽しみだね!」

「う、うん…」

またこうた君の顔は真っ赤に染まった。もしかして女性恐怖症だったかな!?でも…話しかけたいんだよね…。

ちなみに、この二人…いや誰にも。陽くんの事について話したことは無い。同情なんかいらなかったし口にしてしまったらもっと思いが溢れそうだったから。
あの茶髪のふわふわした髪。
長身な身体で…でも筋肉はあって…
笑顔が輝いてて…。
思い出したらダメなのに。
誰にもこの気持ちは止められない