天空に一番近い蒼~女子校体育教師と生徒の恋の場合


「光…」



両の手を掲げた時、





「そこで何やってる?」





不意に背後から声がした。

びくりと背筋が身震いする。






「俺で良けりゃ話聞くからさ、戻ってこいよ。」





恐る恐る振り返ったその先には





仁科先生がいた。





仁科先生は笑顔─どこか強ばった笑顔で左の手をこちらに差し伸べている。



それを見て私はこの人が(私が飛び降りようとしていると思ってるんだ。)と悟った。



飛び降りようなんて微塵も考えていない。

いや、むしろ、『飛び上がりたい』と思っていたくらいだ。

が、それが出来ないことくらいわかる程度の理性は十分にあったので、それならばいっそ、ここに留まっていつまでもこの麗しい空を見ていたいと思っていた。



「…嫌。」

「嫌、って、お前…」



先生は困り果てた笑顔で、ゆっくりと一歩一歩、こちらに近付いてくる。



「邪魔しないで、って、前にも言ったじゃない。」

「いやぁ、そう言われてもー…」



言いながら先生は私の座る直ぐ傍のフェンス越しまで進んできた。

そして、しゃがみ込んでフェンスの隙間からこちらに手を差し入れようとする。



が、先生の大きな手はフェンスを通らず、指の付け根辺りで止まってしまう。

先生が小さく舌打ちする。



「なぁ、俺の手、取れる?」

「取れない。」

「そんなことないだろ。手、取ってよ。」

「嫌。」