けれども、そんなことをしたって意味はない。
耳をふさいだところで、人の話す声は聞こえてくる。
だから、みっともなくったって叫んだ。
「それは本当に私自身のことを見てですか? 公爵家の娘だからじゃないですか? 身近にいた同い年の娘だからじゃないですか? 治癒能力者だからじゃないからですか? 周囲に幼い頃から言われ続けてきたからじゃないですか? 『お后様には聖女様がお似合いですね』って」
「そんなことはない!」
「……エドワード様に何を言われても、こればかりは信じられません。なにしろ、エドワード様は『聖女』でも『公爵家の娘』でもない『私』と出会ったことがないのですから」
愕然としたエドワード様に、私がかける言葉は何もない。
本人にも、誰にも、どうしようもないことを、傷つけるような言葉を投げたのは他ならぬ私なのだから。
気まずい空気がサロンに漂う。
幸運なことに、ちょうど良くルイとカイルが部屋に戻ってきて、重くにごっていた空気を壊してくれた。


