乙女ゲームヒロインは悪役令嬢をお望みです!


「そのせいで影で私がなんて呼ばれていたかご存知ですか?」

この国の全員が私のことをそう思っている、なんては言わない。

けれども、一部からはそう見られている、ということは知っている。私の異能を必要としない人からは。


「『無能力者』ですよ。……公爵家の盾などありませんでした」

「……そんなことを言われていたなんて、おまえは一度も言わなかったじゃないか」

「えぇ、私自身が“事実”だと思ってしまったのですもの」


ニコリと笑って答えると、エドワード様は悔しそうに顔を歪める。

ノアはわざわざ私の隣に移動して手を握った。

私は小さく首を横に振って、ノアの手を振り払う。


「ですから、私はエドワード様と親しくしたくなかったのです。私とエドワード様が親しい様子をみせれば、多くの民は私たちを祝福するでしょう。『治癒能力者』と王家がつながれば、私が国外へ逃げることはないでしょうからね。ですが、貴族では話が変わります。派閥が違えば、私の存在は邪魔となる──」

「それでも俺はおまえのことをす──」

「聞きたくありません!」


耳をふさいで、目をつむった。

これ以上の話は聞きたくない、という意思を表して。