伏せた視界にはティーカップしか入らない。
「……私と婚約したところで、王家にはなんの得もありませんわ。むしろ負債を抱えるようなものです」
「そんなことはないだろう。ダンカン公爵家とのつながり、異能力者の獲得──」
「それ、ですわ。私は魔力がないのです。私は運良く“治癒能力”という異能を得ることができましたが、異能力者の誰もが便利な異能を得るわけではありません。……仮にもしもですよ? 私とエドワード様が婚姻を結び、子供もできて……その子供が異能力者になってしまい、“使えない”異能力者でしたら──つらい立場になるでしょう。そして、私にはそんな子供を守る力などありません。無責任なことはしたくないのです」
「……王家と公爵家との盾がある。そんな心配は無用だ」
「果たしてそうでしょうか? これは私にも謎なことなのですが、どうして私は魔力がないのにセント・フォリス学園へ通えているのでしょうか?」
そんなこと、私だって改めて言われなくても知っている。
『ダンカン公爵家』という力が、使ってはいけない力が特例として認めさせているだけだ。


