「ずっとって、相変わらずだなほんとに・・・麦が泣くぞ」



あ、ってことはアイツとはまだ顔合わせてないのか。別に言わなくても実際に会えば何か感じとるとは思うが・・・



「麦ちゃんは大丈夫でしょ。もう慣れっこだと思うしさ。」

「それよりその転校生、ナニモノ?」


・・・ハハッ。顔合わせるも何も、ちょっと見ただけでわかっちまうか。
興味なさ気にスマホを眺めるアユに、さすがと思う。


「なんだやっぱり何か感じたか。遠くからちょっと見ただけなのに。」

「別に。・・・ただ、あんまり関わりたくない雰囲気してたなって。」

「そうか。・・・・・・。王牙の総長だとよ。」



一瞬、ほんの少し空気が揺れる。ピンッと張ったような、殺気にも似たものを感じた。


「・・・・・・・」


アユのスマホをいじる手が止まり、視線を俺に向けた。
さっきと同じくじっと見つめられてるだけなのに、まったく感情を読み取れない瞳をしているアユ。もう慣れているとは言え、やはり少し恐怖すら抱くその瞳にゾッとする。



「大丈夫だ。“あの事”はしらねぇよ。・・・知ってたらここに入れたりしない。」



その言葉をきくと視線はまたスマホに落ちた。
自分から逸らされた視線に息を吐いた。どうやら自然と息を詰めていたらしい。
そのことにため息を吐きたくなりたくなった。



「・・・・・・なんで同じクラスなわけ。」



・・・、納得はしてないらしい。



「しょうがねーだろ、あいつ試験満点でここに転入してきたんだから。」

「・・・・・・・へぇ、ここの試験を満点で、ね」



この学校は県内でもトップクラスの頭脳を誇る学校だ。入学試験は勿論の事、他の学校から転入ともなればその試験は入学試験よりもレベルは高くなる。
その試験を王牙の総長、来栖湊は満点で突破したのだ。この学校内でも1、2を争う秀才だろう。



「ここの転入試験で満点取るなんて、次の期末が楽しみだなあ」

「別に。どうでもいい。とにかくあいつには関わらないようにしよう・・・。めんどうに巻き込まれたいやだし。」


そうつぶやいたアユはまたスマホをいじり始めた。



洋介side end