それから、秋体に向け猛練習の日々が続いた。
選手達は日に日に強くなっていくが、その分疲れも溜まっていっていた。
でも、それを支えるのは私たちマネージャーの仕事。
選手に負担がかからないよう、私でもできそうな荷物運びやグラウンド整備は率先して手伝った。
おにぎりもドリンク作りも、いつも以上に愛情を込めた。
辛いことだらけだった。
でも、部は段々明るくなり、みんなの絆がより1層深まって行った。
いよいよ明後日に迫った秋体。
新チームになって初めての公式戦ということもあり、みんないつも以上に集中して取り組んでいた。
でも、ピリピリしたムードではなく、みんな楽しそうに練習していた。
こんな雰囲気の永徳高校野球部は私は大好きだ。
「じゃ、また明日。
解散。」
夜20:00。
私たち野球部は、学校の部活動の活動時間が許されている時間まで練習をしている。
それから帰るので21:00に家に着く人とかもいるらしい。
本当に遠いところに住んでいる人は寮生活をしている。
私は、ここから歩いて20分ほどの所に住んでいる。
だから、いつも歩いて帰っている。
家が近い輝さんと矢本さんと一緒に。
矢本さんは今回のチームのエース。
中学は隣の学校だったけど、丁度私の家の近くと矢本さんの家の近くが境目らしく、よく一緒に帰っている。
「いよいよ明後日だな。」
矢本さんが夜空を見上げながらそう言った。
「ああ。」
輝さんも夜空を見上げ、そう言った。
私も2人に習い、上を見上げた。
そこには、星が広がっていた。
「きれい…」
自然と出た声に私はびっくりし、手で口を抑えた。
2人は気づかなかったみたいで、まだ上を見ていた。
「秋は勝って関東行くぞ。」
右隣から矢本さんがそう言った。
矢本さんは手をギューッと強く握っていた。
夏に比べ、矢本さんの球はものすごく変わっていた。
MAX132キロぐらいだった球の速さも、今はMAX140キロになっていた。
投げる球のコントロールもとてもよくなり、持ち球の種類も増えていた。
「矢本さんならいけますよ。」
「うん、ありがとう結城。
じゃ、また明日な。」
矢本さんはニコッと笑い、1人別の方向に歩いていった。
一方、輝さんはまだ上を見つめていた。
横から見た輝さんの顔はとても不安そうだった。
「輝さん。」
「ん?」
私が呼ぶと何事もなかったかのように優しい顔で私のことを見てくれる。
「不安、ですか?」
そう聞くと、一瞬辛そうな顔をした。
それでもすぐにいつもの顔に戻った。
「あー、やっぱ結城はすげーな。
俺達のことなんでもお見通しだ。」
輝さんは少し笑いながら歩き出した。
私もその後をついて歩いた。
「こないだの大会思い出しちゃうんだよな。」
輝さんの声は悲しそうだった。
「俺、打つのちょっと怖くなってる。
大事な場面で俺が打つことになった時、夏のこと思い出すんだ。
ああ、また俺のせいで優勝できなかったら、って。」
暗闇でも分かった。
輝さんの手が少し震えていた。
「ま、そんな事言っても俺は打つけどね。
打たなきゃ勝てない。」
輝さんはいつも強い。
自分のやるべき事からいつも逃げない。
そうゆう輝さんの真っ直ぐな気持ちが、私は大好きだ。
「なーに俺のことずっと見てんの?
恥ずかしいからやめて。」
輝さんはニヤニヤしながらそう言った。
うん、大丈夫そうだ。
輝さんなら優勝に導いてくれそう。
「あ、ほら着いたぞ。」
気づいたら私の家に着いていた。
やっぱり、幸せな時間ほど経つのは早いもの。
「いつもありがとうございます。
それじゃ、おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ。」
輝さんはそう言って来た道を戻っていく。
いつもそうだ。
暗いからっていつも自分の家を通り過ぎてるのに送ってくれる。
自分だって疲れてるはずなのに。
早くご飯食べたいはずなのに。
「やっぱり好き。」
私には直接的伝える勇気なんてない。
だから、輝さんの後ろ姿にそう呟くだけ。
私は輝さんと違って弱い人間だな…
選手達は日に日に強くなっていくが、その分疲れも溜まっていっていた。
でも、それを支えるのは私たちマネージャーの仕事。
選手に負担がかからないよう、私でもできそうな荷物運びやグラウンド整備は率先して手伝った。
おにぎりもドリンク作りも、いつも以上に愛情を込めた。
辛いことだらけだった。
でも、部は段々明るくなり、みんなの絆がより1層深まって行った。
いよいよ明後日に迫った秋体。
新チームになって初めての公式戦ということもあり、みんないつも以上に集中して取り組んでいた。
でも、ピリピリしたムードではなく、みんな楽しそうに練習していた。
こんな雰囲気の永徳高校野球部は私は大好きだ。
「じゃ、また明日。
解散。」
夜20:00。
私たち野球部は、学校の部活動の活動時間が許されている時間まで練習をしている。
それから帰るので21:00に家に着く人とかもいるらしい。
本当に遠いところに住んでいる人は寮生活をしている。
私は、ここから歩いて20分ほどの所に住んでいる。
だから、いつも歩いて帰っている。
家が近い輝さんと矢本さんと一緒に。
矢本さんは今回のチームのエース。
中学は隣の学校だったけど、丁度私の家の近くと矢本さんの家の近くが境目らしく、よく一緒に帰っている。
「いよいよ明後日だな。」
矢本さんが夜空を見上げながらそう言った。
「ああ。」
輝さんも夜空を見上げ、そう言った。
私も2人に習い、上を見上げた。
そこには、星が広がっていた。
「きれい…」
自然と出た声に私はびっくりし、手で口を抑えた。
2人は気づかなかったみたいで、まだ上を見ていた。
「秋は勝って関東行くぞ。」
右隣から矢本さんがそう言った。
矢本さんは手をギューッと強く握っていた。
夏に比べ、矢本さんの球はものすごく変わっていた。
MAX132キロぐらいだった球の速さも、今はMAX140キロになっていた。
投げる球のコントロールもとてもよくなり、持ち球の種類も増えていた。
「矢本さんならいけますよ。」
「うん、ありがとう結城。
じゃ、また明日な。」
矢本さんはニコッと笑い、1人別の方向に歩いていった。
一方、輝さんはまだ上を見つめていた。
横から見た輝さんの顔はとても不安そうだった。
「輝さん。」
「ん?」
私が呼ぶと何事もなかったかのように優しい顔で私のことを見てくれる。
「不安、ですか?」
そう聞くと、一瞬辛そうな顔をした。
それでもすぐにいつもの顔に戻った。
「あー、やっぱ結城はすげーな。
俺達のことなんでもお見通しだ。」
輝さんは少し笑いながら歩き出した。
私もその後をついて歩いた。
「こないだの大会思い出しちゃうんだよな。」
輝さんの声は悲しそうだった。
「俺、打つのちょっと怖くなってる。
大事な場面で俺が打つことになった時、夏のこと思い出すんだ。
ああ、また俺のせいで優勝できなかったら、って。」
暗闇でも分かった。
輝さんの手が少し震えていた。
「ま、そんな事言っても俺は打つけどね。
打たなきゃ勝てない。」
輝さんはいつも強い。
自分のやるべき事からいつも逃げない。
そうゆう輝さんの真っ直ぐな気持ちが、私は大好きだ。
「なーに俺のことずっと見てんの?
恥ずかしいからやめて。」
輝さんはニヤニヤしながらそう言った。
うん、大丈夫そうだ。
輝さんなら優勝に導いてくれそう。
「あ、ほら着いたぞ。」
気づいたら私の家に着いていた。
やっぱり、幸せな時間ほど経つのは早いもの。
「いつもありがとうございます。
それじゃ、おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ。」
輝さんはそう言って来た道を戻っていく。
いつもそうだ。
暗いからっていつも自分の家を通り過ぎてるのに送ってくれる。
自分だって疲れてるはずなのに。
早くご飯食べたいはずなのに。
「やっぱり好き。」
私には直接的伝える勇気なんてない。
だから、輝さんの後ろ姿にそう呟くだけ。
私は輝さんと違って弱い人間だな…