帰り道。
私はこれからについて考えた。
もう一度、私を記録員に選んでもらえるように具体的に何に挑戦していくのか。
そんなことを考えていると、やっぱり涙がでてきてしまった。
悔しかった。
こうやって、私をベンチに入れてくれたのに、私は何も出来なかった。
私じゃなかったら、勝てたのかな…
そうネガティブに考えてしまう。

「よっ、結城。
って、なんで泣いてんの!?」

「輝、さん?」

突然声をかけてくれたのは七瀬輝さんだった。
輝さんとは中学のころから同じ学校に通っていた。
輝さんは私の1つ上で、中学でも野球部に所属。
中学にはマネージャーという制度はない。
でも、私が甲子園に行く夢を顧問に話したら特別に許可してくれた。
それから輝さんとはよく話すようになり、なんでも相談し合う仲になっていた。
そんな輝さんは、私の憧れの人で。
私の好きな人…

「泣くなよ、3年生に言われただろ。」

輝さんはそう言い私の背中をさすってくれた。

「はい、でも悔しくって。」

私は泣きながら思っていることを全部話した。

「そうだよな、俺もめちゃくちゃ悔しいよ。
でも、一つだけ言えることがある。
俺達は、ベンチにいたのが結城でよかったって思ってるよ。
結城が思っている以上に俺らは助かってるし、支えてもらってる。」

輝さんは真剣な顔でそう答えてくれた。
正直、嬉しかった。
これが例えお世辞だとしても。

「分かった。俺が約束する。」

輝さんは私の右手を握り、私の顔を見て言った。

「俺が結城を甲子園に連れていく。
次こそちゃんと打って、勝つ。
結城の夢、叶えるから。」

輝さんの目は真剣だった。
輝さんならきっと、叶えてくれる。

「はい、お願いします。」

私は握られた手に力を入れた。