「七瀬、そんなに泣くなよ。」

「だって、俺のせいで先輩達ともう…」

「七瀬のせいじゃない。
むしろ、今まで注目されてなかった俺らが決勝までこれたのがすごいだろ。」

私たちの学校の野球部は発足8年とまだまだ新しいチームで、今までは初戦で負けてしまうことが多かった。
しかし、今年は初めて決勝まで上り詰めることができた。
大きなことだった。

「次はお前の番だ、七瀬。
お前と矢本の2人で、永徳高校野球部を甲子園に連れていけ。」

エースの立本さんは2人の肩を叩きそう言った。
3年生の先輩は誰1人泣いていなかった。
みんな笑顔で私たちに接してくれた。
でも、もうこの笑顔にも会えなくなってしまう。
もう、3年生の先輩達とは練習ができないんだ…。

「おいおい、お前まで何泣いてんだよ、結城。」

「すみません…
でも、もう先輩達とお別れなんだって考えたら涙が。」

すると、今度は立本さんが私の肩に手を置き

「お前がそんなんだと、選手を支えられないだろ。
甲子園行くには、お前の支えが必要なんだ。
俺達が今年ここまでこれたのも、お前と橋本の支えのおかげだ。
だから、結城は笑って、選手のことをちゃんと支えろ。」

そう言ってくれた。
私は目を閉じ深呼吸をした。
そうだ。
私も気持ちを切り替えなきゃ。

「はい、わかりましたっ!」

私は笑顔で先輩達に答えた。