輝ける場所

「有意義な冬休みにしろよー。
じゃ、良いお年を。」

担任の先生がそう言うと多くの人が教室から出ていった。
教室に残ったのは部活がある生徒で、みんな着替え始めた。

「なあ結城。」

声の聞こえた方を向くと、そこには川上くんが立っていた。

「なに?」

「俺さ、最近不安なんだよね。」

川上くんはとても深刻な顔をして私にそう話してくれた。
時計を見てみると、時刻は11時。
部活は11時30分からだから、30分では話せなさそう…。

「川上くん、今日部活終わったらなにか用事ある?」

「いや、なにもないけど。」

「今日、予定だと5時で終わる予定なのね。
だから、放課後、夜ご飯ついでにお話聞くよ!
それでも、いい?」

川上くんは一瞬迷って、

「分かった。ありがとう。」

そう答え、荷物を持って教室を出ていった。
迷ったってことは、相当思いつめてるってことだよね。

「よーし。
私の出番かな!頑張らなきゃ…」

私は深呼吸をし、荷物を持って教室を出た。
私が川上くんの支えになれるように。
美優さんにも相談してみよう。

ドンッ

廊下の曲がり角、私は誰かとぶつかってしまった。

「いたたたた…」

私は腰をさすった。
それより、早く謝らないと…

「あの、すみませんでした…」

私がぶつかった相手を見ると、前にいたのは輝さんだった。

「おーい、結城。
ちゃんと前見ろよ。」

輝さんは少しニヤニヤしながらそう言った。
輝さんは倒れていなくて普通に立っていた。

「本当にすみません。
ケガ、ありませんでした?」

そう聞くと輝さんは大きな口を開けて笑った。

「え?」

私がそう聞くと、輝さんはまだ少し笑いながら

「俺、鍛えてるからさ。」

そう言いながら私に手を差し伸べてくれた。
その大きな手を握り、私は立ち上がった。

「ありがとうございます。」

「結城、軽いな。
ちゃんとご飯たべろよ。」

「食べてます。」

「じゃあ、もっと食べなさい。
ほら、部活行くよ。」

輝さんは私の荷物を持って歩き始めた。

「荷物くらい持てます!」

私は輝さんから自分の荷物を取り、輝さんの少し前を歩いた。
最近、マネージャーが先に帰ることが多くて、輝さんと矢本さんと一緒に帰ることが減っていた。
だから、すごく久しぶりに輝さんと話せて嬉しかったのが正直な気持ちだった。
きっと今、私は気持ち悪いくらいにニヤけてるんだろうな。
この顔は輝さんには見せられないな。

「なーにニヤけてんの。」

とか思ってたのに、気づいたら輝さんに見られてた。
あー、最悪…

「輝さんと久しぶりに話せて嬉しかったんです。」

「え、やけに素直じゃん。」

輝さんは口元を抑えてそう言った。
少し顔が赤くなってて。
そんな顔されたら期待しちゃうよ。

「輝さんはずるいです。」

「結城のがずるいから。」

私たちは無言で総合グラウンドへと向かった。
いつかこういう関係じゃなくて、恋人として一緒に歩きたいな…
なんて大きすぎる夢で。
馬鹿なこと夢見てる暇あるならもっと選手のこと支えられるように努力しろって、結城希空。

「あと15分で始まるからね。」

輝さんは私にそう言い矢本さんの方へと行ってしまった。
あー、なんて幸せな時間だっただろう。

「さ、希空ちゃん。
気持ち入れ替えてね!」

「え?」

「嬉しい気持ちは分かるけど、今は練習に集中しましょう!」

美優さんはよく分からないことをいい、私をマネ室へと引っ張っていった。
確かに、美優さんの言う通り。
ちゃんと切り替えなきゃね。