試合後、私は矢本さんと一緒に輝さんのいる病室へ向かった。
先にネットで結果をしていたのかもしれない。
輝さんは既にベッドの上で泣いていた。
そんな姿を見た矢本さんも涙が零れていた。
「ごめん。」
か細い声で矢本さんは謝った。
「ごめん。」
輝さんもそう謝った。
そんな2人のやり取りにいてもたってもいられなくなった私は病室を出た。
中からは2人の泣く声だけが聞こえてきた。
そんな声に私も涙しか出てこなかった。
私たちはそれ以上話すこともなく、今日は解散になった。
病院の扉を出た時だった。
『病室きてくれないか。
結城だけ。』
輝さんからそのようなメッセージが入っていた。
「矢本さん、すみません。
先、帰っててください。」
私は輝さんのメッセージを見せてそう言った。
「おう。
しばらくオフになるし、ゆっくり休めよ。」
「はい。」
私たちはそこで別れ、私は輝さんのいる病室へと戻った。
私はもう1度輝さんのいる病室に戻ってきた。
あいかわらず中は賑やかだった。
「ごめんな、呼び戻しちゃって。」
「いや、大丈夫ですよ。」
「屋上、連れてってくんね?」
輝さんは自分で車椅子に乗り、私にそう頼んだ。
私は輝さんの車椅子を押し、病院の屋上へと向かった。
その間、会話などなく、ただ静かに向かった。
病院の屋上は広かった。
時間的に、丁度夕焼けもキレイに見えた。
「今日はお疲れ様。」
「ありがとうございます。」
私は輝さんの車椅子を動かないように止め、ベンチに座った。
「俺、今順調にリハビリ進んでて、来月には退院だきるって。」
「よかったですね!」
「ああ。」
さっきまで泣いていたとは思えないくらい、輝さんは私に優しく接してくれた。
でも、輝さんの表情はやっぱり苦しそうな顔をしていた。
「輝さんは、大丈夫ですか?」
「なにが?」
「その。
負けたのが自分のせいだ、とか思ってないですよね?」
輝さんは一瞬驚いたような顔で私の方を向き、笑った。
「なんで笑うんですか!」
「いや、さすが結城だなって思って。
速報見てからずっと思ってたよ。
俺が怪我しなければって…
ま、そんなの後悔してももう遅いんだけどね。」
輝さんは遠くを見つめながらそう言った。
「川上くん、頑張ってました。
輝さんには及ばないよって。
でも、川上くん、今までとは全然違いました。
ちゃんとみんなをリードできていましたよ。」
「どうした、急に。」
輝さんは笑いながら私の顔を見てそう言った。
「なにが言いたいかっていいますと。」
「うん。」
「後悔してる暇があったら、早く戻ってきてください!
もしかしたら、春から2番は川上くんになっちゃうかもしれませんよ!
ってことです。」
それを聞いた輝さんは大笑いをした。
笑いごとじゃない。
真剣なのに…
「やっぱ結城は面白いや。」
目に涙を浮かべながら笑っていた。
「そんなん分かってるよ。
川上だけには絶対2番を譲らない。
川上以外にもだけどね。」
輝さんはいつもの優しい顔でそう言った。
そう。
私はそれが見たかった。
腰を怪我してからずっと見ていなかった表情。
この顔が見れて安心した。
輝さんは絶対帰ってきて、今の永徳高校野球部を引っ張ってくれるって。
「待ってますから。」
「おう。」
私と輝さんは握手をした。
その後、少し世間話をして、輝さんを病室に送り帰った。
悔しくて悲しい気持ちでいっぱいだった私の心はいつの間にかスッキリしていた。
それもきっと輝さんのおかげなんだろうな。
本当に輝さんには助けられてばかりだ。
「次は私の番。」
私は沈む夕日にそう誓い、自分の家へと帰った。
