「波南」


面食らう様な表情で見直された。
好きだと言われても尚、私のモヤッと感は晴れない。


「教えて下さい。先生は藤田くんのフィアンセとはどういう関係だったの!?」


「どういうって……幼馴染に近いくらいよく一緒に遊んだ相手だが」


「それだけ?」


迫るように聞き返し、どうなの!?と問い詰める。


「どうしてそんなに俺と英里紗のことを気にするんだ?」


妙な感じだな…と囁く彼にギクッとした。


「俺は長男でもあるし、弟や妹と同じように英里紗のことも面倒見ろと言われただけだ。

英里紗は親父の友人の娘で、小さい頃から人形みたいに可愛かったから俺なりに優しくしてやってた。

だけど、あいつはいつも靖ばかりを追い掛けて、俺なんかまるで眼中にも入れないで、『やっちゃんやっちゃん』と靖ばかりを呼んで……」


「あっ!」


「何だ?」


急に思い出した。
病院の診察室で藤田くんと再会した時、つまんなさそうにしてたのはそれでか。


(それってジェラシー?それとも兄としてのプライドが許さないってこと?)