その後朝食を済ませてから、いつもより時間をかけてデートの支度をした。

しっかりおしゃれするのなんて珍しいわたしに、彼はちゃんと「かわいい」って褒めてくれて。



この人は女子が彼氏に求めるツボをすべて理解してるんじゃないかな、と思ってしまう。

だって無言で手を握ったら握り返して恋人つなぎにしてくれるし、絶対にわたしを車道側に歩かせたりしないし、歩くスピードも合わせてくれるし。



「それぐらい出すからいいよ」って言ってるのに映画代もドリンク代も出してくれたし、スマートにエスコートしてくれる。

……自慢ばっかりですみません。



「南々瀬」



同棲してから一緒に過ごす時間も多いため、デートの回数は少ない。

家で一緒に映画を見たりなんかはするけど、だからこそ、こうやって過ごせるのが嬉しい。



そういえば去年、ご褒美旅行で横浜に行ったのが、はじめてのデートになるんだろうか。

あのときはまだ、好きの気持ちも口に出せなかったけれど。



その日の晩に、すべてぶちまけてしまって。

……結局おさまるところにおさまってしまってるんだから、不思議な話だ。




「ん? なに、いつみ」



「……いや。

涼しくなってきたけど、肌寒くないか?」



わたしが観たいと言い出した人気の恋愛映画に付き合ってもらい、満足なわたし。

ふたりでお昼を食べてからショッピングとカフェでの休憩をフル活用して、時間をつぶした。



おかげで現時刻は16時前。

向かっている先は例のリナさんのところで、尋ねてくれる彼に「大丈夫」と答える。



「こっちの方、はじめて来た……」



「……それでいいんだよ」



なんだか、街の雰囲気が違う。

まだ時間が早いのかはわからないけれど、偶然視界に入ったお店の看板は、電源が落とされていて。たぶん、ネオンランプだと思う。