高校生になってから、生活ががらりと変わった。

今まで国立の小中学校に通っていたあたしは、一般受験で公立の高校に入学。
学習塾もやめて、習い事もやめて、一気に自分の時間も増えた。
契約なしだけど、スマホという新しいものも手に入って、今までとは全く違う生活を送っている。

毎朝5時半に起きて、お弁当と朝ご飯を作る手伝いのあと、6時半ごろからバス停に向かう。
バスに1時間揺られて、降りたらまた歩いて学校に向かう。
途中で必ずコンビニに立ち寄るのは、Wi-Fiがないと使えないこのスマホを使うためだ。

放課後は、コンビニで時間をつぶす。
ダンス部に所属はしているものの、部活嫌いが発症してもう行っていない。
あたしの高校…春川高校のダンス部は全国大会常連だけあって、練習がめんどくさい。
あたしは大会が嫌いだ。
大会のためのダンスが嫌い。
大会にかける温度差が、幽霊部員になる大きな原因だと思う。

どうでもいいけどあたしの小学生時代は
ピアノと空手とダンスの習い事で疲れ切っていた。
ピアノコンクールでは銀賞以上、ダンスは県優勝、空手は全国優勝という実績からわかるように尋常じゃない練習量だった。

ここらへんでは1番の学力がある小学校にかよっていたのにも関わらず、勉強だけはしてこなかった。
小学生から食事の量や内容もほぼほぼ決まっていて、寝る直前まで自主練、疲れ切って倒れるように寝てしまう。
そんな生活をしていた。

きつくて、きつくて、何度も家出をしたりした。
病気や怪我を繰り返していたおかげで、出席日数もギリギリだった。

中学では、吹奏楽部をしながら空手もしていた。
地域からのお願いでダンス教室を開いたりもした。
確か中学二年生の時から学習塾に通いはじめ、遠く離れた高校に入学することができたのは、本気で頑張ったからだとお思う。
ちょうど大けがで派遣の決まっていた空手の世界大会は別の人にお願いしたから練習が厳しくなることはなかった。
だから勉強に集中できて、たしか…偏差値20以上は上げたと思う。

県で1番倍率の高い、制服がとても可愛い、行事が楽しいことで有名な春川高校のの入学できたのは奇跡だった。

今の高校生活に満足してないことはない。
ただ、あたしの欲が多いんだと思う。

高校生になったら、カラオケや映画館にたくさん行けると思っていた。
でも、6人兄弟の家には、そんな金はどこからも湧いてこないらしい。

アルバイトしたいけどダメだと言われるし…

自由な高校生も大変なのかもしれない。

キラちゃんとなながなにか楽しそうに話している。
そのそばの開いてる席に座ったあたしは、キラちゃんの友だちでもとダンス部の星来とお喋りを初めてた。
ダンス部の練習についていけなくなってやめた部員は少ないくない。
ざっと30名はいると思う。

「雪まだダンスいってるの?」
「ま、まぁね!全力で幽霊部員として活躍してる!!」
「雪は期待されてたし、簡単にはやめれないよね…」
「いややめようと思えばいつでもやめれるんじゃん??先輩とかからlineくるけど、教室までは押しかけてこないし、大丈夫だと思う~」

期待なんかされるはずない。
通ってたスクールでは、小さい身長や少し丸い
体形のせいで降ろされることも多々あったし特別うまいわけでもないし。
結局何やってもフツーに追いつけないから無理してフツーに上げるんだけど
そういうのって大抵あとで大けがするし、倒れるし。
めんどくさいことばっか。

自分が冷めてるわかってる。
こんなひどい性格の奴、そうそういないだろうなぁ。

「なーに話してるの?」

かたにポンと手を置かれ、ビクッと肩が跳ね上がる。

振り向くと、同じくダンス部の千太が意地悪く笑っていた。

「相変わらずの驚き用にツボるんだけどー」
「なんかムカつくわー!」
「あれ、センターの千太くんじゃん!!」
「なな、お前バカにしてんの?!」

あたしと千太の間にななが入って来た。
ダンス部の数少ない男子部員千太は、毎週金曜日に行われる校内ダンスパーティーでセンターを務めたことから“センターの千太”とからかいを受けていた。
もっとも嬉しいはずのからかいだが、どうも千太てきには気にくわないらしい。

「バカにしてないよ!面白いから言ってるだけー」
「それをね、バカにしてるっていうんだよ!」

相変わらずの面白い2人だなぁ
見ていると、いつも笑顔になる。

「お前、もうダンス部こねぇの?」
「まぁ、ね。今は行く気ない。」

頰をつっつかれて、不機嫌気味に答えるあたしの顔をまじまじと見ている千太は、どこか悲しいようだ。

「あたしがいなくなったって100人も部員いるんだから回せるでしょ。」
「回わせるけど、雪さんがいるといないじゃ変わるんだよ。」
「ほらぁ〜、雪!言われちゃってるよー!!!」
「なな、あんたうるさい!」

突っ込んできたななをキラちゃんが抑え込む。
さすがキラちゃんだ。

あたし、割と頑固だし。
意見を曲げるつもりが微塵もないわけだから、千太や星来がこう…説得しようとしても意味ないと思うんだけどな。