「…あなたが会津藩の『上』の人なんでしょ?」

少し低めの声に男は困ったように笑った。

「君が、あの報告にあがった「拾い物」か。なるほどね」

動揺など見えないその様子に、恐怖や怯えは一切感じられなかった。

「それで、私に何の用だい?こんな夜中にわざわざ人目を忍んで」

只事じゃないよね、と告げると相手が薄く微笑んだ…気がした。

「情報回るの早いな。……まあいいや。今日はあなたにお願いがあって来たんです」

「お願い?」

「はい。あなた方が今、邪魔に思っている鴨ちゃ…芹沢局長について」

「ふふ、彼と随分仲がいいんだね。…正確に言うと、私とて彼を殺したくはない。彼は新撰組のことを一番に考えてくれている。…方法が随分と荒っぽいが」

「ええ、彼の方法は荒い。…ですが、彼がその行いを改めたら?酒漬け、乱闘だらけの日々を改善したとするなら……組の規則に従い、局長らしいところを見せられたなら…」

「……そうだね、それなら我々が口を出す必要はない。…しかし、できるのかい?」

「少しだけ、時間をください」