「……鴨ちゃん」
現れたのは鴨ちゃん。
不意に平助の言葉が蘇る。
「ねえ鴨ちゃん。鴨ちゃんはさ、まだ生きたい?」
「…何かあったのか?あいつらに何か吹き込まれたのか」
くいっと盃を煽り、こちらを見ずに言う鴨ちゃん。
「…まぁ、なんとなくわかってたぜ。俺はいつか…そう遠くないうちに殺されるって」
「…っ。どうしてっ…」
「まあ聞け。俺は別に構わなかったんだよ。俺がいなくなることでこの組が一つに纏まるんなら…俺はそれでいいんだ。…まぁ、欲を言うと俺も生きてそれを見たいが…無理だろうしな」
ふっと寂しげに笑ってまた盃を煽る鴨ちゃん。
「…できるよ。鴨ちゃんが生きてそれを見る方法。お…私に任せて」
もう性別がバレてるので敢えて「俺」を使うことはせずに言った。
「あ、でも鴨ちゃんの協力も必要だからよろしくね」
これは謂わばただの自己満足に過ぎない。
でも、そうだとしても鴨ちゃんを死なせたくない。
だから助ける。その為には――
「いい?鴨ちゃん。これから言うこと絶対に守ってよ。…じゃないと私怒っちゃうからね」