「…ああ、芹沢さんか。また」


「芹沢?誰だ、それ」


斎藤の呟きに疑問で返すと、すっと彼の長い指があの男に向かってのばされた。


「あの人が芹沢鴨。うちの組のもう一人の局長。でも…」


斎藤が一度口を閉じた時、騒ぎの中心である男らが騒ぎ始めた。


「外野が余計な口挟むんじゃねえよ!元はと言えば、その女がだなあ…!」


「あーあーうっせえ。こんな街中でギャアギャア騒ぐんじゃねえよ。みっともねぇ上に更に見苦しいことすんのか?」


気だるそうな、だが芯のある声。


「貴様っ、芹沢鴨だろうっ!貴様なんぞにとやかく言われたくないわっ!」


チャキ、と金属の擦れる音がして、次に響いた呻き声に周囲がざわめく。