「そんなこと、簡単に言うなよ」

「⁉」


 耳元で男の人の声がして、慌てて目を開けるけど公園には私以外誰もいない。

 空耳……?
 そんなはずない、あんなにハッキリ聞こえたのに。

 ゾクッと悪寒が走って、帰ろうとした時だった。


「おーい、こっちこっち」


 頭上から呑気な声が聞こえた。

 ……は⁉ 頭上⁉

 顔を勢いよく上げると、そこには月の光に照らされてキラキラと輝く金色の髪をなびかせながらニシシと笑っている男がいた。

 かっ、かっこいい……。

 不覚にも胸がときめいてしまったけど、すぐに異変に気付いた。


 なぜなら、その男はふよふよと宙を浮かんでいて身体もうっすらと透けているから。


「お、おば、おば、おばけっ⁉」


 信じたくないけれど、この男を言い表すなら子の言葉しかない。
 自分でも、顔が青ざめるのがわかった。


「そんなに驚くなって! 大丈夫‼ 害はない‼」

 
 私の反応に慌てているけど、正直大丈夫って言われるほど大丈夫じゃない気がする‼


「こ、こないで‼」


 だんだんと近づいてくるそいつに耐え切れなくなり、私はジャングルジムから飛び降りて家までまっすぐ、ただひたすら走った。